87.荒川川(あらかわがわ)の
  カンヒザクラ(寒緋桜)自生地


カンヒザクラ

 荒川川一帯のカンヒザクラ(寒緋桜)は、その数、350本ともいわれ、1月から2月にかけて満開し、山肌を深紅に彩ります。
 ヒカンザクラ(緋寒桜)とも呼ばれますが、日本本土のヒガンザクラ(彼岸桜)と混同されやすいので、一般にはカンヒザクラと呼んでいます。和名の寒緋とは、寒期に緋色(濃くて明るい朱色)の花を咲かせるとの意味があるといわれています。
 沖縄県では、本島北部の名護市周辺にもカンヒザクラが生育していますが、開花時期は石垣島よりも早く、1月上旬頃となっています。
 本土におけるソメイヨシノによる「桜前線」は北上していきますが、沖縄のカンヒザクラによる「桜前線」は南下する傾向があります。
 その原因として、桜の開花には一定の寒さが必要といわれ、寒波を受けて後に開花の時期を迎えますが、石垣島は沖縄本島に比べると寒波がゆるやかであり、その温度差によって開花の時期が遅れるとされています。また、寒い年ほど、よく咲く傾向にあるようです。
 カンヒザクラの原産地は台湾や中国南部といわれています。石垣島では、いつ頃から生育しているのかは定かではありませんが、カンヒザクラが自生しているということは、台湾や中国大陸と地続き時代があったことを証明する貴重な資料であるといわれています。
 また、1731年(雍正9)に首里王府から八重山の役人に出した文書には、「去年の夏に具志筑登之が拵えて、差し上げた桜木の茶台は、結構な出来ばえなので、御書院へ差し上げました。桜の木は、今後、御用をも仰せ付けられるであろうから、勝手に伐り絶やさないように」とあり、古くは、木工材としても利用され、大切に管理されてきたようです。
 荒川川一帯のカンヒザクラは、貴重な自生地として周辺の植物相も含めて、昭和47年(1972)に国の天然記念物に指定されています。

文:松村順一
写真提供協力:松島昭司
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