ナカドー道

更新日:2020年03月06日

松の抱護林と家路につく子どもたち

松の抱護林と家路につく子どもたち
〔昭和9年〈1934〉7月3日。真栄里集落西方、
3番アコウ付近〕写真撮影・大島広

農作物を頭にのせ、市街地へ行商に向かう婦人たち

農作物を頭にのせ、市街地へ行商に向かう婦人たち
〔昭和9年〈1934〉7月3日。平得・真栄里両集落西方〕
写真撮影・大島広

八重山の代表的民謡「トゥバラーマ」の歌詞のなかに次のような一節がある。
  「なかどう道から、七けら通ゆるけ、仲筋かぬしゃま、相談ぬならぬ〈なかどう道から幾度通っても、仲筋カヌシャマとは相談ができない〉」。
  歌詞に歌われているナカドー(仲道)道を写したのが上の写真で、昭和九年(一九三四)に撮影されたものである。
  ナカドー道とは、仲道給油所(字登野城六五五番地の五)あたりから国道三九〇号線を東へ進み、真栄里集落に至る道をいい、古くから宿道(番所と番所を結ぶ道)として利用されていた。
  写真が写された場所は、国道三九〇号線と横四号線が合流する三差路あたりで、後方に写っている大木が「トゥバラーマ」ゆかりの三番アコウ、左右に延びている林は、かつて平得・真栄里両集落の周辺を取り巻いていた松の抱護林、左上は電信柱である。それに果菜類、アッコン(甘藷)が入っているとみられるバーキ(笊)などを頭にのせて裸足で歩いている婦人たちは、平得・真栄里や大浜方面から四カ字へ行商に向かう人たちである。
  写真からは、戦前のナカドー道あたりの風景、バスやトラックなどの少なかった当時の頭上運搬のようす、その頃の婦人たちの普段着の着こなし方などがよみとれる。時間がゆるやかに流れていた昭和初期ののどかな雰囲気が感じられる。(文・松村順一)