与那国町の風景

更新日:2020年03月06日

ナンタ浜と祖納集落遠景

ナンタ浜と祖納集落遠景
〔昭和33年〈1958〉8月〕
写真提供・本田安次

祖納集落

祖納集落
〔昭和28年〈1953〉9月〕
写真提供・与那嶺イク

ゆなぐにぬとぅけや いきぬみでぃぐくる くくるやしやしとぅ わたてぃいもり (与那国への渡海は、池の水心地、心安々 と渡って来て下さい) 有名な「どぅなんすんかに」の一節である。航海の難所といわれた与那国のイメージを、なんとか打ち消そうとする島びとの心情が伝わってくる。ナンタの離れに打ち寄せる白波は、島を目前にした船を寄せつけようとしなかった。そんな孤島性が、与那国の文化を育んできたのである。
  茅ぶきに竹垣囲いの集落は、まだ昭和三〇年代までは健在であった。豊かな水田を育てた田原川が、ナンタ浜に注いでいる。その詩情豊かな光景は、八重山が生んだ音楽家・宮良長包の「なんた浜」の曲とともに知られる。
  しかし、本土復帰後の生活の変化で、ナンタの離れは埋め立てられ、コンクリートの港に変わった。いまその港には「なんた浜」の詩碑が建っている。かつて詩情を誘った風景は、その碑のなかに刻まれ、静かに語りかけているようである。(文・三木健)